最後に、免疫系の話を。
免疫の中心をになっているのは、血液中の「白血球」という成分である。白血球には、細菌など比較的大きめな異物を処理する「顆粒球」と、ウイルスなどそれよりも小さな異物を処理する「リンパ球」のふたつがある。このふたつに自律神経は深く関わっている。
交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えるということがわかっている。自律神経のバランスがよければ「顆粒球」と「リンパ球」のバランス、つまり白血球のバランスもよくなるが、自律神経のバランスが崩れると白血球のバランスも崩れてしまう。その結果、免疫力が下がってしまう。
問題となるのは、ストレスなどで交感神経が過剰に優位になった場合である。交感神経が優位になり顆粒球が増えると、基本的に細菌などの感染症に対する抵抗力が高くなるので免疫力は上がる。ところが、交感神経が過剰に優位な状態が続くと事情がかわってくる。顆粒球は異物を取り込み、みずからがもつ「分解酵素」と「活性酸素」によって処理する。ところが、顆粒球の数と体内に侵入してくる細菌のバランスがいいときは何も問題はないのだが、あまり細菌がないのに交感神経が過剰に優位になることで顆粒球が増えすぎてしまうと、健康維持に必要な常在菌まで殺してしまい、かえって免疫力を下げてしまうのである。
また、顆粒球が増えすぎてしまうと、使われなかった顆粒球が残ってしまう。じつは、これが大問題で、顆粒球の寿命は2~3日と短いうえ、死ぬときに、もっていた「活性酸素」をばらまいて細胞を傷つけてしまうのである。この活性酸素が増加することで、遺伝子を傷つけ、がんのもととなる細胞のコピーミスを生みやすくするといわれているのだ。
慢性的にストレスを感じる。すると、交感神経が過緊張状態になる。そして、活性酸素が増加してコピーミスが起こって、がん細胞が生まれ、さらに相対的にがん細胞を処理するリンパ球が減り、処理機能も低下してがんを発症する。このような流れでがんを発症する可能性が高まっていくのである。つまり、ストレスなどによる心の問題が自律神経に作用し、それがさらに人間がもっている細胞の修復システムや免疫のシステムに作用して「病気」という形になって外に現れてくるということである。
体が病んでくれば、どうしても気持ちが落ち込んでくる。なぜ治らないのか、なぜ自分だけがと、どんどんストレスが増えて悪循環に陥りがちになる。そのため、病気の人は交感神経が緊張して顆粒球が増えているパターンになりやすい。顆粒球が増えすぎ、それが壊れるときに活性酸素がたくさん出て、ますます病気を悪くしてしまう可能性がある。がんのような大病にかかると、自分が病気になってしまったことに対して心が乱れ、交感神経を優位にして自律神経のバランスを大きく崩してしまいがちになる。心を乱せば乱すほど自己治癒力は低下し、心を前向きにすればするほど自己治癒力は高まる。がんと闘うためには、気持ちのもち方がとても大切になってくる。
「がんは自然に消える」というタイトルで著者が伝えたかったことは、 ”日々できてしまっているがん細胞は自分の体が消してくれているんだ” ということだと思います。
その機能がより良く働くような体内の環境作りに鍼灸治療は役立つはずです。是非とも生活の一部に組み込んでいただきたいと思って。