「癌では死なない」 稲田芳宏 ・ 鶴見隆史 ・ 松野哲也 著 より油について書かれているところを抜粋します。
癌を防ぐためには、3大栄養素のひとつである脂質の摂り方も大切だ。我々の体は60兆個の細胞で作られているが、その細胞を包む細胞膜の原料となるのが脂質だからだ。簡単に言うと、質の良い油を摂れば良い細胞膜が作られ、質の悪い油を摂れば悪い細胞膜ができてしまうし、癌にもなりやすくなる。
質の悪い油の代表はマーガリンだ。実験によると、マーガリンの塊を日の当たる窓辺に置いて観察したところ、少し溶けただけで2年経ってもカビひとつ生えず、通常なら食品であればたかるはずのハエやアリなどの虫もまったく寄りつかなかったという。この実験を行った人物は、「マーガリンは食べ物ではなくプラスチックである」との結論を出している。
マーガリンは植物油に水素を添加し、人工的に油の性質を変えて個体にしたもので、強引に飽和させて酸化させた油と言える代物だ。また、市販の揚げ物やクッキーなどによく使われているショートニングもマーガリンから水分を抜いたものだし、ファットスプレッドもマーガリンをクリーム化した同様のものである。
このような人工的な質の悪い油を摂ると、その脂質を原料に質の悪い細胞膜が作られてしまい、細胞同士の情報伝達ができなくなるなど細胞膜が正常に機能しなくなってしまう。細胞膜を通して行われるミネラルの交換やビタミン類の入れ替えといった新陳代謝も悪くなり、そのため、活性酸素を処理できなくなって、むくみや痛みのもとになる。最悪の場合、悪性リンパ腫やそのほかの癌を引き起こすことにもなりかねないのである。たとえばコンビニで売られているような菓子やパン、チョコレートやケーキ、スナック菓子、コーヒーに入れるフレッシュミルクなどは、かなりの量のトランス型油が含まれている。
一般の家庭でよく使われているサラダ油も要注意だ。いわゆるサラダ油やコーン油、大豆油、紅花油、米油といった植物油に含まれるリノール酸は、体にある程度は必要なのだが、過剰に摂りすぎるとギザギザの硬い細胞膜を作ってしまい、筋肉や血管の柔軟性が損なわれるほか、体の至るところに炎症ができやすくなり、動脈硬化や高血圧の原因にもなる。リノール酸をもとに作られる局所ホルモンが血管収縮や微小循環不良を起こすからである。
では逆に、良い細胞膜を作る質の良い油とはどんなものだろう。まず思い浮かぶのが、非常に柔軟な細胞膜を作るα-リノレン酸を多く含んだ油だ。α-リノレン酸は天然魚や亜麻仁油、エゴマ油などに多く含まれているので、そうした油は積極的に摂りたいものである。ただし、α-リノレン酸から作られる細胞膜は構成が軟らかく壊れやすいので、これを支えるために、少量の飽和脂肪酸かリノール酸、またはオレイン酸の油も摂る必要がある。飽和脂肪酸は肉や乳製品、バター、ラードといった動物性脂肪に多く、オレイン酸はオリーブ油や菜種油に豊富に含まれている。しかし、飽和脂肪酸とリノール酸に関しては、積極的に摂る必要はあまりない。現代の日本の食生活では、これらを摂りすぎることはあっても不足する心配はまずないからだ。むしろ、過剰にとってしまうほうが問題だ。
脂肪の役割は、細胞膜を作るだけではない。エネルギー源になるのはもちろん、ビタミンA、D、E、K、といった脂溶性ビタミンの輸送と吸収、体を温める効果、コレステロール、神経の鞘(ミエリン)の原料となって各種ホルモン(特に局所ホルモン)の生産を行うなど、数多くの重要な働きを担っている。人間は油なしでは生きていけないのである。
油は癌を治すためにも必要だ。癌の原因と言われる活性酸素を無害なものに変えてくれる最高の武器がビタミンA、D、E、Kなのだが、これらのビタミンの吸収と運搬という大事な役目を担っているのが油なのである。
では、具体的にどんな油を摂ったら良いのだろうか。
ひとつはアーモンドやクルミ、ピーナッツといったナッツ類の油だ。縄文時代から食べられてきた木の実には非常に良い油(主にオレイン酸=オメガ9)が含まれている。魚からも質の良いα-リノレン酸が摂れる。ただし、天然魚でなくてはならない。養殖魚は餌の関係でリノール酸が多くなっているからだ。お勧めなのは亜麻仁油だ。しかし加熱すると酸化するので、サラダにかけるなど生で食べなくてはいけない。
一番怖いのは酸化した油だ。酸化した油は活性酸素のひとつである過酸化脂質となり、人体を酸化させるもととなるのだ。デパ地下やスーパー、コンビニなどで売っている時間の経った揚げ物や乾燥した干物、スナック菓子、うどんやそば、お好み焼きやたぬきうどんなどに入れる天かすなどの油は、まず酸化しているとみて間違いない。レストランやお惣菜店などのフライやカツ、てんぷらなども、酸化した古い油を使い回している可能性が高い。天ぷら店でも一流の店では毎日使った油を捨てて取り替えているという。そういう店の天ぷらなら比較的酸化も少ないので、たまに食べるくらいなら良いと思うが、極力食べないようにしたほうが無難だ。
― 以上、抜粋
スーパーで買い物するときに成分表を見てみると、様々な食品に植物油が使われているのがわかります。気づかないうちにかなりの量を摂取しているなあと感じます。ちょっと注意したほうが良さそうですね・・・。