新聞記事より
もの忘れの増加は認知症の始まりとは限らない。「別に原因があることもあるので注意してほしい」と東京女子医大の岩田誠名誉教授(精神内科)は話す。
岩田さんによると、高齢者に多いもの忘れの原因の一つが薬の影響だ。たとえば、長時間効くタイプの睡眠導入剤を使っている人は、普通に行動しているようにみえても注意力が低下して、ものを覚えられなくなることがある。
抗精神病薬や市販の風邪薬にも注意したい。利尿薬やうつ病の薬で血液の塩分に異常が起こると、ぼうっとすることがある。血液の塩分の異常は、嘔吐や下痢が続いても起こりうる。岩田さんは「認知症と診断された人が、薬をやめたら良くなったという例はいくらでもある」という。
栄養不足による貧血などにも注意が必要だ。胃がんで胃の摘出手術を受けてから何年もたった後、ビタミンB12の欠乏で貧血が起こり、認知症のような症状がでることもある。胃がないと、胃が分泌するビタミンB12の吸収に必要な物質が不足するからだ。
頭蓋骨の下にある硬膜と脳の間に血がたまって脳を圧迫する「慢性硬膜下血腫」のため、ぼんやりしたり、異常行動が出たりする人もいる。頭をぶつけるなど、覚えていないような軽い外傷でも、細い静脈が切れて、ごく小さい血のかたまりができ、1、2カ月後に症状が出ることがある。検査で見つかれば、手術でほとんど治せるという。